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意外と知らない【ヒアルロン酸】の真実

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意外と知らない【ヒアルロン酸】の真実

ヒアルロン酸=保湿成分のイメージが強いけど、実は肌の中でフォルムに関わっていたり、表皮では血管のような役割も担っていたりと超がつく重要成分。その実態や増やし方について、2人の専門家に取材!

知っているようで知らない、メジャー成分の必要性を今改めて!

「ヒアルロン酸をケアすると、世代を問わずメリットがいっぱい!」

友利新先生

内科・皮膚科医

友利新先生

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医師の立場から、美容と健康を追求し、美しくなるヒントやコスメの選び方をさまざまなメディアを通じて発信。

「肌の健やかさや美しさを大きく左右するのがヒアルロン酸です」

吉田浩之研究員

カネボウ化粧品 ヒアルロン酸博士

吉田浩之研究員

皮膚ヒアルロン酸研究に25年以上従事。その分解メカニズムを解明するなど日本が世界に誇る研究者のひとり。

【真実1】
実は“表皮”にも“真皮”にも存在する稀少な成分

友利先生
友利先生

ヒアルロン酸って、美容好きなら誰もが知っているような成分で、とても身近ですよね。一般的には、化粧品の保湿成分というイメージが強いけど、実は肌をはじめ、目や関節など体のいろんな臓器や器官に存在して、さまざまな働きをしていますよね。


吉田研究員
吉田研究員

はい、おっしゃる通りです。肌の中においては表皮と真皮、それぞれに存在していて、表皮においては、細胞と細胞の間を埋めるように存在。ハリや潤いをキープするほか、表皮は血管が通っていないため、血管の代わりに栄養分の通り道となり、健やかさの維持に役立っています。対して真皮では、コラーゲンのネットワークに囲まれて存在し、水をたっぷりと抱え込むことで内側から膨らもうとする圧力によって、弾むようなハリや弾力を与えています。


友利先生
友利先生

考えてみると、表皮にも真皮にも存在する成分って珍しいですよね。


吉田研究員
吉田研究員

確かにそうですね。表皮と真皮、それぞれがヒアルロン酸を生み出すために異なる仕組みを持っているのもユニーク。そして代謝されて、新しいものに置き換わるスピードが速い! コラーゲンはつくられたものが新しいものに半分置き換わるのに十数年とも言われていますが、ヒアルロン酸は、たったの1日から数日。常に今肌にあるヒアルロン酸を積極的に分解し、新しいものをつくり出すダイナミックなサイクルをしています。


友利先生
友利先生

ヒアルロン酸をケアすると、効果をスピーディに感じるということも期待できます。表皮のヒアルロン酸をケアすれば表皮のターンオーバーが高まり、肌荒れや乾燥を防げてハリにつながりますし、真皮のヒアルロン酸をケアすれば、肌のフォルムが整うことにつながる。つまり、世代を問わず、結果を感じやすいといえますね。


【真実2】
“ヒアルロン酸注入”と“ヒアルロン酸配合コスメ”の役割はまるで違う!

注入してフォルムをつくるほか、真皮成分を増やす「肌育」施術も!

友利新先生
友利先生
友利先生

ヒアルロン酸といえば注入が有名ですが、これは顔の削げているところにヒアルロン酸を注射で直接送り込んでフォルムをデザインするというもの。ヒアルロン酸に形を保つようなものを混ぜている架橋タイプなので、代謝されるまで3ヵ月〜半年ほど持つのが特徴です。


吉田研究員
吉田研究員

対してヒアルロン酸を配合したコスメは、肌表面にとどまって潤いの蒸散を防ぐ膜をつくったり、肌の中での保湿がメインですね。


友利先生
友利先生

はい、同じようにヒアルロン酸そのものを入れるにしても別モノといえます。実は膝の関節の動きをよくするためにトロトロとして柔らかい非架橋のヒアルロン酸を注入するという治療があるのですが、これをすると高齢の方でも膝の肌の質感だけツルッツルになるんです。


吉田研究員
吉田研究員

それは面白い! 膝の肌の質感が変わるのは知りませんでした。


友利先生
友利先生

その膝の治療とまったく同じではないですが、フォルムをつくるヒアルロン酸注入とは異なり、ECM製剤と呼ばれる非架橋のヒアルロン酸を注射で真皮に直接入れ込むことで真皮の線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを生み出す働きを活性化するという施術があります。数時間で吸収された後、数ヵ月から1年単位で効果を発揮し、ハリや毛穴の目立ちなどを改善。「肌育」とも呼ばれる、今話題の施術なんです。ただし、費用面や痛みを伴うことで続かないという声も多く、肌の中のヒアルロン酸自体を増やすならスキンケアでアプローチできるものを選ぶのも、ひとつの手だと思います。


【真実3】
ヒアルロン酸を減らさないためには“紫外線対策”が有効

友利先生
友利先生

「肌の中のヒアルロン酸を日々の生活で増やすにはどうしたらいい?」という質問もよく受けるのですが……。まずは減らさないように、日焼け止めを塗るのが基本ですよね?


吉田研究員
吉田研究員

はい、長期にわたって紫外線を浴びるような生活をしていると、肌内のヒアルロン酸の量が減少することを確認しています。


友利先生
友利先生

ヒアルロン酸の産生を増やすというサプリもあるけど、私がエビデンスまできちんと確認できているのは、実は一部。また、加齢によりヒアルロン酸の産生機能が落ちてしまうからこそ、肌内のヒアルロン酸を増やすような働きのあるコスメで日々ケアすることが大事ですね。


【真実4】
ヒアルロン酸は“与える”だけではなく“増やす”ことが重要

肌内のヒアルロン酸の産生や分解のメカニズムを解明し、コスメに応用してます

吉田浩之研究員
友利先生
友利先生

「ヒアルロン酸コスメ」と括られるものには、ヒアルロン酸を肌に与えるものと、肌の中のヒアルロン酸を増やすものがありますが、混同されがちですよね。


吉田研究員
吉田研究員

実際、我々カネボウ化粧品でも、両方のアプローチを研究しています。まず、与えるヒアルロン酸については、肌表面で膜を張るために高分子の状態で配合したり、低分子化して角層の中まで浸透させて、肌の中でキープさせたり。修飾基と呼ばれるものをくっつけて保水力を高めたものなどもあり、これらを、感触や目的に合わせて、選択したり組み合わせて配合しています。


友利先生
友利先生

各社、研究や開発を進めているところですよね。ただし、肌の中へ入っても、早く代謝されると考えられるから、やっぱり毎日スキンケアをする必要がある。そして、プラスして、カネボウ化粧品が得意とする増やすアプローチを取り入れるといいですよね。


吉田研究員
吉田研究員

はい!  肌の中で表皮細胞や真皮線維芽細胞がどのようにヒアルロン酸をつくり、どんなメカニズムで分解しているかを研究してきました。その結果、真皮線維芽細胞のヒアルロン酸産生を高めるメチルセリンを独自に開発したり、ワレモコウという植物からとれるエキスに、真皮線維芽細胞の過剰なヒアルロン酸分解を抑制する効果を見出したりしました。表皮細胞では、ヒアルロン酸の材料となるNアセチルグルコサミン(NAG)を添加すると産生量が増えることから、アセチルグルコサミン(天然型NAG)を開発。さらに安定性を高めたアセチルグルコサミンエチルエーテル(NAG2・0)も生み出しました。これらはすべて論文にまとめたり、国際的な学会などで発表しています。


友利先生
友利先生

きちんと論文化しているのが、本当にすごいところ。ヒアルロン酸コスメはいっぱいあるからこそ何を選ぶか迷うけど、ポイントは信頼できるヒアルロン酸研究がベースにあること。そして気持ちよく続けられるテクスチャーかどうか。今日お話を聞き、あらためて、大事なポイントだと認識しました!


撮影/榊原裕一 ヘアメイク/金澤美保(MAKEUPBOX) スタイリング/槇佳菜絵 取材・文/楢﨑裕美

Edited by 松本 薫

公開日:

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