芸人の中には、「芸人たるもの美ではなく芸を磨け」というムードがまだ残っている。その昔、劇場に立つ時、芸人が集う楽屋でヘアアイロンやワックスを使ってセットしているといじられる可能性が高く、それにリアクションするのが面倒くさいので、自宅ですべてを済ませてから劇場に行くようにしていた。ましてや、楽屋でメイクなんてしようもんなら!
でも、僕がお客さんとして劇場に行ったと想像してみる。テレビで見かけるタレントさんが実際には髪がボサボサで肌もボロボロだったらやっぱりガッカリすると思う。地方からわざわざ足を運んでくれているお客さんもいるし、修学旅行の学生さんだって来てくれている。せっかく時間とお金をかけ、スケジュールに僕達のステージを組み込んでくれ、遠くから来てくれたのにもかかわらず、舞台上の芸人がくすんでイキイキと輝いて見えなかったら、素敵な思い出になるだろうか?
プロの芸人として、面白い漫才をお届けするのと同じくらい、できるだけカッコよくいることも大切なことだと思っている(本来なら、プロ意識が高いと褒められてもいいことのような気がするのだけれど? なんだか、おかしな話だ)。だから、「イタイ」と言われても、それを笑われていじられ続けても、僕は見た目を気にかけるようにしてきた。
そもそもイケメンじゃないから頑張ろうとしているだけなのに、「ブスのくせに美容頑張ってイタイ」と僕にリプライを飛ばしてくる人はいったい何事ですか(笑)? 美しい人だけにしか美容が許されないなら、差はどんどん開くばかりじゃない?
「スキンケアと歯のメンテナンス、脱毛はやっておいたほうがいい」というオリエンタルラジオ藤森慎吾さんのアドバイスは、若手芸人の間では語り継がれている。現に藤森慎吾は中田敦彦というハイパーブレーンと活動の場所を分けた後も、場を問わず活躍を続けている。そのルックスは40歳手前とは思えないほど若々しい。歳を重ねるごとに魅力的になっている気さえする。見た目や言動から溢れ出る清潔感が幅広い層に支持され続けている理由のひとつだと思う。
相方が男前。以前なら、コンビのどちらかがイケメンである場合、二人の“対比”で笑いをとることが当たり前だった。
でも僕は、イケメンがもう一人の容姿をいじったり、もう一人が自分のことを“じゃないほう”だと自虐したり、そういう笑いのとり方が徐々に少なくなっていくのではないか、という時代の風を感じていた。第7世代という言葉自体は過去のものになっているけど、あの世代以降の芸人たちの活躍がお笑い界に一石を投じたのはたしかだと思う。
当初、「僕がキレイになったほうが、絶対に仕事増えんじゃね?」とコンビとしての仕事の広がりを思い描き、ワンチャンに賭けて美容芸人として大きくハンドルを切った。
その予感は的中し、今にいたる。
『自分を大切にする練習 コンプレックスだらけだった僕が変われたすべてのこと』
形式:ソフトカバー 四六判 224ページ(2色192ページ/カラー 32ページ)
価格:¥1650(税込)
発行:講談社 ISBN:978-4-06-530216-3
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りんたろー。
1986年生まれ。2008年4月、東京NSCに14期生として入学。2017年末に兼近大樹を誘い、お笑いコンビ「EXIT」を結成。ネオ渋谷系チャラ男漫才と称するしゃべくり漫才のツッコミを担当。ネタ作りも担う。
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撮影/魵沢和之(まきうらオフィス)
Edited by 大森 葉子
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