「多くのプラスチック製品が消費されている昨今、とくに環境負荷が大きいと世界で話題になっているのが『コスメから出るマイクロプラスチック』です」と、語るのは社会的利益をもたらすオーガニックの本質を広める活動家レムケなつこさん。「あまり知られていませんが、非常に深刻です」と、警鐘を鳴らすレムケさんに、コスメとマイクロプラスチックの意外な関係について教えてもらった。
\教えてくださったのはこの方!/
レムケなつこ|オーガニック専門家
ドイツ法人オーガニックビジネス研究所CEO。本場ドイツの大学院と食品研究所でオーガニックを研究開発。慶應義塾大学経済学部卒。 オーガニックセクターの国連IFOAM欧州本部リーダーシップ研修に日本人初で選抜。20代でボリビアにてJICA⻘年海外協力隊、メキシコでJICA専門家として途上国の生産者支援に関わった経緯からオーガニックに目覚める。オンラインスクール運営、企業研修、コンサルティング、講演、執筆など。
環境に負荷を与えるマイクロプラスチックとは
直径5mm以下のプラスチックのこと。スーパーの棚に陳列された食べ物のパッケージ、ペットボトル、洗剤や調味料の容器に歯ブラシにレジ袋……私たちの暮らしに欠かせない大量のプラスチック製品。使い終えたあと適切に処理されなかったり、ポイ捨てなどで道ばたに転がり落ちてしまったプラスチックごみは、雨風にあおられ、やがて河川から海へと流出する。海岸や海中に漂流したプラスチックごみは、波による摩耗や紫外線、酸化などにより少しずつ劣化し、5mm以下の微細なプラスチック粒子となり蓄積される。これをマイクロプラスチックと呼ぶ。
「マイクロプラスチックは非常に小さいですが、自然分解せず、数百年以上または半永久的に自然界に残り続けると言われています。海へ流れこむプラスチックごみの量は、世界自然保護基金WWFによると年間800万tにものぼり、重さにするとジェット機5万機相当にもなると言います。現在、プラスチックの廃棄量と生産量はともに増加しており、世界経済フォーラムは、2050年までに海洋ゴミの量は海にいる魚の量を上回ると推定。プラスチックには有害物質が含まれていたり、マイクロプラスチックとして漂流している間に有害物質が付着するといった報告があります。微生物や魚、貝などの海の生き物からマイクロプラスチックが検出されており、それらを食べる人間もマイクロプラスチックを体内に取り込んでいることが明らかになってきました」(レムケなつこさん、以下同)
コスメがもたらすマイクロプラスチック汚染
コスメの容器にプラスチックが使われることが多いことから、使用済みのプラスチック容器を回収してリサイクルに取り組んだり、代替素材を使ったり、プラスチックを使った包装を廃止するなど、多くのコスメメーカーの間で積極的な対策が行われている。けれどコスメがもたらす環境問題は、容器や包装だけではない。昨今、問題視されているのがコスメの原料に含まれるマイクロプラスチックだ。
「国連UNEPの調査によると、コスメに調合されている原料自体に500種類以上のマイクロプラスチックが含まれていることが分かっています。中には、プラスチック容器と同じ量のマイクロプラスチックが原料となっているコスメも存在するという報告も。私の暮らすドイツでは、なんと年間2万3700tのマイクロプラスチックがコスメによって海に流れ込んでいるそうです」
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コスメ原料の何がマイクロプラスチックなのか